文部科学省は令和8年7月24日、「DX/GX両立に向けたパワーエレクトロニクス次世代化加速事業」の採択結果を発表しました。同事業は、これまで文部科学省が推進してきた次世代パワー半導体「窒化ガリウム(GaN)パワーデバイス」を実際の産業に応用するための研究開発を加速させるものです。
本事業の狙いは2つに分かれています。第一は、GaNパワーデバイスの産業化に残る技術的課題の解決です。具体的には、半導体製造の重要工程であるイオン注入技術をGaN材料に適用する技術を完成させ、損失が極めて少ないデバイス構造を作り込む技術の確立を目指します。第二は、GaNパワーデバイスを用いたパワーエレクトロニクスシステム全体を試作・検証することで、社会での実装を加速させることです。この過程では、AI(人工知能)や数理科学の知見も活用しながら、デバイスの性能を最大限に引き出す回路や部品の開発も進めます。
今回採択された研究テーマは4件です。テーマ1の「GaNパワーデバイス作り込み技術」は、名古屋大学工学研究科の須田淳教授が率いるチームが、GaN縦型パワーデバイスの先端プロセス技術開発に取り組みます。
テーマ2は「GaNパワエレシステムトータルとしての実証」として、3つの研究グループが異なる応用分野で実証研究を進めます。長岡技術科学大学工学研究院の伊東淳一教授のグループは、AIを活用した設計手法により、静止系電源システム(据え置き型電源)における超高密度・高効率システムの開発に当たります。
横浜国立大学工学研究院の赤津観教授のグループは、GaNパワーデバイスとAI協調設計によるMHz級高周波電源アーキテクチャの創成を目指し、自動車やロボット駆動など運動系電源システムの開発を推進します。静岡大学工学部電気電子工学科の芳賀仁教授のグループは、統合型エンジニアリング手法を用いて、高出力密度のGaNインバータ駆動モータの開発に取り組みます。
採択に至るプロセスは以下の通りです。令和8年3月6日から4月16日の期間に公募が行われ、6件の提案がありました。その後、外部有識者で構成される審査委員会により、書面審査と面接審査を経て、最終的に4件の採択が決定されました。
GaNパワーデバイスは、従来のシリコンベース半導体と比べて損失が少なく、高速動作が可能な次世代技術です。脱炭素社会の実現には電力変換効率の向上が不可欠であり、本事業を通じた研究成果が、電気自動車充電インフラ、産業用電源システム、再生可能エネルギー関連機器など、幅広い分野での応用につながることが期待されています。
出典:文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/boshu/detail/mext_00547.html
