産業競争力・研究力中核大学群WG第2回、要件と産学連携エコシステムを議論

文部科学省ウェブサイトが公開した「産業競争力・研究力中核大学群に関するワーキンググループ(第2回)議事録」によると、令和8年7月30日に経済産業省本館で開催されました。このワーキンググループは、文科省と経産省の合同組織で、特定分野で国際競争力を持つ大学群の形成を目指しています。

【議論の主要テーマ】

第1回の議論を踏まえ、第2回では特に2つの要件に焦点が当てられました。

(一)産業競争力強化へのビジョン:大学が自身の研究力をいかに向上させ、国際的な競争力強化に貢献するか、具体的な戦略を示すこと

(四)経済圏への深い貢献:大学が企業や国立研究開発法人、自治体などと組織対組織で連携し、サプライチェーン全体を視野に入れた関係を構築することの重要性

事務局は、前回の議論で出された意見を整理し、評価方法や体制の整備、ガバナンス体制の実効性、研究力・人材育成などの観点を提示しました。

【産業界からの期待】

経団連常務理事の小川委員は、経済界の立場から3点の期待を述べました。

第1は「価値創造人材の育成・輩出」で、分野横断的な探求力や創造性を備えた研究者・技術者の育成が必要とされました。

第2は「世界に冠たる研究力の確立」で、特定分野で世界トップレベルの研究拠点形成が求められています。

第3は「研究成果の社会実装・産業競争力強化」で、企業との共同研究から事業化までを一気通貫で進めることが期待されました。小川委員は、研究成果を社会実装する際の「死の谷」を越える鍵は人材の流動化にあると指摘し、クロスアポイントメント(複数機関での同時就任)や兼業を進めるため、雇用契約や知財管理などの課題解消が必要と述べました。

評価に際しては、論文や研究成果だけでなく、人材育成、産学連携、社会実装、地域への貢献など多角的視点の必要性が強調されました。

【都市の産学連携エコシステムの事例紹介】

三井不動産の湯川俊一部長は、海外の中規模都市における産学連携エコシステムの事例を紹介しました。

ペンシルベニア州ピッツバーグの事例では、製鉄業で財をなした篤志家が教育資金を寄附し、文化・教育基盤を整備。その後、鉄工業の衰退を経て、大学がAIやメディカル分野に注力し、学生の起業を支援することで、AIロボティクスやライフサイエンス産業が創出されました。

イタリアのトリノでは、行政主導で都市再生が進み、FIAT創業家やサンパオロ財団の寄附、大学による教育研究が組み合わさり、特にFIATの閉鎖工場跡地が大学に開放され、インキュベータとして活用されました。

アメリカのマディソンでは、ウィスコンシン大学を中心に、研究者と企業をつなぐ「カタリスト」の存在が機能し、電子カルテ分野で世界一のエピック・システムズなどが生まれました。

湯川部長は、これらの事例に共通する成功要因として、(1)世代を超えた人材育成の仕組み、(2)アカデミアが中心となった文化・教育基盤の整備、(3)地域の強みと産業基盤の融合、(4)カタリスト(つなぎ役)の存在、(5)産学官連携の場整備、の5点を指摘しました。

日本版エコシステムの構築には、幼少期から科学技術への興味を育む仕組み、郷土愛を醸成する文化的環境、外部から人材を呼び込む魅力(生活の質の確保含む)が重要と述べられました。海外の成功事例として、沖縄のOISTが研究環境のみならず豊かな住環境や保育環境の整備に力を入れている点が挙げられました。

【今後の論点】

ワーキンググループでは、今後以下の点を中心に議論が進められます。

・産業競争力強化に貢献する大学の多様な在り方
・産業界に求められること
・政府による継続的なコミットメントと支援体制

事務局は、大学側の取組だけでなく、産業界側の取組視点を含めた評価指標や求められる取組内容について、さらに詳細な検討が必要としています。

出典:文部科学省ウェブサイト https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu31/001/gijiroku/1422208_00001.htm

本記事は一次情報をもとにWorldEdu Report編集部が編集しています。編集方針:運営者情報

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