文部科学省の中央教育審議会大学分科会は2026年6月3日、大学教育の質を評価する新たな制度の基本方針をまとめました。現在の認証評価制度(開始から20年経過)の課題を踏まえ、学生の実際の学修成果を可視化し、社会に広く訴求する仕組みへと転換させるものです。
【現行制度の課題と改革の背景】
現在の認証評価は、大学が内部質保証システムを持っているかを確認することに重点を置いています。しかし社会が求めているのは、入学後に学生がどの程度成長したかという「教育の質」の可視化です。また、評価基準が複数の機関で異なることによる客観性・公平性の問題、評価を受ける側の負担感と評価の社会への訴求力不足も指摘されていました。
少子化が急速に進む中、教育活動に丁寧に取り組みながらも知名度が低い地域の高等教育機関も含め、質の高い教育を行う機関が社会から適切に評価される必要があります。
【改革の3つの柱】
新制度は次の3点を基本とします。
1つ目は「学修者本位の教育を引き出す評価」で、法令適合性の確認に加えて、学生の知識・能力の習得状況、学生自身の成長実感、社会による評価を可視化し、教育改善につなげます。
2つ目は「社会に開かれた質保証・質向上」で、評価結果を学生ら社会が理解しやすい形で公表し、高等教育への理解と支持を獲得します。
3つ目は「持続可能で効果的な評価」で、評価に必要な項目を厳選し、データプラットフォームを構築して評価の負担を減らします。
【新評価制度の具体的な枠組み】
評価対象は、大学全体の質保証責任の確認と、学部等の教育活動評価の2段階です。学部等の評価では、「質保証の視点」(法令で求められる基準への適合)と「質向上の視点」(教育水準向上と教育成果の実現)から評価します。
教育成果は、教員による直接評価(成績やポートフォリオなど学生の実績に基づく評価)、学生による間接評価(成長実感や調査による主観的評価)、社会からの評価(就職状況など)を総合的に判断します。
評価結果は4段階(「要是正」から星3つまで)に分類されます。質保証基準に達しない場合は「要是正」となり、基準をクリアした上で質向上の度合いに応じて段階付けされます。最高評価(星3つ)を受けるには、ディプロマ・ポリシー(卒業までに身につけるべき能力)の水準が高く、学生が入学時から大きく成長し、その成果が継続的・組織的である証拠が必要です。
【評価サイクルと実施体制】
評価サイクルは現在の機関別認証評価7年、分野別5年から6年に統一されます。学部単位の評価を中心とすることで、分野別評価の機能が強化されるため、機関別認証評価と分野別認証評価の統合が検討されています。
評価は医学教育評価機構のような特定分野専門機関と総合評価機関が並列して実施します。評価の質を確保するため、複数の評価機関がある場合は基準判断の統一性を保つ調整組織を設けます。
【データプラットフォームと情報公開】
大学改革支援・学位授与機構にデータプラットフォームを構築します。機能は3つで、文部科学省実施の調査データを一元入力して大学負担を減らす、AI活用で定量確認を自動化して評価者負担を軽減、評価結果を統一フォーマットで一元公表し検索機能を提供します。
自己点検・評価書を基本とし、追加資料の作成は原則求めない運用が目指されています。実地調査は対面実施が望ましいとしつつ、柔軟な対応を認める方針です。
【課題と今後の展開】
会議では「直接評価」「間接評価」といった重要概念について、多くの教員が理解困難な可能性が指摘されました。定義や具体例を図表で示す工夫が必要とされています。
「要是正」評価を受けた機関については、6年を待たずに速やかに改善し再評価受審が求められます。改善不十分な場合は文部科学省が厳正に対応します。評価結果は資源配分や政策に活用される見通しです。
新制度は令和8年の部会決定を経て、実装準備が進められる予定です。
出典:文部科学省ウェブサイト https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/055/giji_list/1422801_00024.html
