文部科学省は2026年6月29日、AI for Science推進委員会の第5回会合をオンラインで開催しました。同委員会は、人工知能を科学研究に活用する推進施策について検討する組織です。
【SPReAD第1回公募の実績】
AI活用型科学研究開発基盤「SPReAD」の第1回公募では、2026年4月17日から5月18日の約1ヶ月間で、787機関から15,868課題の応募がありました。事務局の分析によると、採択課題は456件(採択率2.9%)で、このうち学生による応募が61課題採択されています。
応募者の属性では、大学・研究機関の教員・研究者が大多数を占め、ポストドクターや大学院生、高等専門学校の関係者、民間企業研究者からの応募も寄せられました。一方で、採択課題では民間企業や非営利団体からの採択がなかったとのこと。
研究領域別では、応募課題・採択課題ともに生命科学・薬学が最多で、次いで電気工学・電子工学・情報科学、臨床科学、社会科学の順となっており、多様な分野におけるAI活用の状況がうかがえます。
SPReADコミュニティの形成も進行中で、採択研究者が課題共有と知見交換を行う場として機能させ、将来的には自走化を目指します。7月下旬にはキックオフを開催予定です。
【研究者の課題認識】
約1.5万人の申請者を対象としたインタビュー調査では、AI利活用における主要課題として以下が抽出されました。最も多くの懸念は「AI出力の信頼性・精度・ブラックボックス化」で、回答の正確性確認やハルシネーション(誤った出力)への不安が報告されています。次点は「AI使用経験の不足と単独遂行への不安」「モデル・ツール選定の困難性」があり、人材育成・チーム体制構築の課題も指摘されています。加えて「計算資源の機密情報制約」「セキュリティ・プライバシー・倫理面の懸念」など、運用上の制約が課題として認識されています。
【米国「ジェネシス・ミッション」との連携】
事務局は、日本と米国エネルギー省(DOE)の戦略的パートナーシップについて報告しました。2026年6月4日にワシントンDCで開催した発表イベントにて、両国は戦略的意向表明書(SOI)に署名。日本はジェネシス・ミッションに参加する初の国際パートナーとなります。
協力領域は量子情報科学、核融合技術、バイオテクノロジー、重要材料、素粒子物理学、自動実験ラボなど多岐にわたります。今後5年間で両国合計10億ドル(米国5億ドル、日本5億ドル)の戦略的投資を計画しており、先端科学技術分野の課題推進と計算資源環境強化を目指しています。新SOIでは、共同研究の際に両国研究者が相互に計算資源を同等条件で利用できることが定められ、経済産業省も加わってAI計算能力強化に向けた連携が強化されます。
【Science for AI・Science of AIの推進】
事務局は「AI for Science」に加え、「Science for AI(AIのための科学)」と「Science of AI(AIの科学)」の重要性を説明しました。
AI for Scienceは、AIを活用して科学研究を加速・変革する取組です。これに対しScience for AIは、数学など既存科学の知見を活用してAIの学習効率や推論能力を向上させ、次世代AI技術を創出する研究分野。Science of AIは、AIの能力・限界・創発現象を科学的に理解し、安全性・信頼性・透明性・説明可能性を向上させる研究です。
事務局は、この3領域が相互に連携し好循環を形成することで、AIと科学技術の双方の飛躍的発展が期待できるとしています。当面の課題として、急速なAI技術進展への機動的対応と、基礎研究の継続的推進のバランス、さらに国として重点投資すべき領域の特定が急務だと指摘しています。
【委員からの指摘】
北野委員は、米国の第一陣研究チームが年末に決定される見込みであり、日本側のカウンターパート確保とファンディングのシンクロが重要と指摘。泰地委員は、Science for AI・Science of AIに関する過去の研究投資が大型AI開発に結びつかなかった反省点を踏まえた政策設計を求めました。
津田委員は、Science of AI研究に従事する日本の研究者数が極めて限定的であり、まずは人材数の拡充が課題と述べています。
出典:文部科学省ウェブサイト https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shinkou/077/gijiroku/aifors_260629_002.html
