文部科学省は令和8年6月18日、「デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議」の第2回会合を開催しました。堀田龍也座長のもと、対面とオンラインのハイブリッド形式で実施され、国会審議の結果や今後の制度整備について検討されました。
## 法律改正と国会での主要論点
学校教育法等改正案は4月7日に閣議決定され、6月10日に参議院本会議で可決・成立、6月17日に公布されました。この改正により、教科書に従来の紙形式に加えてデジタル形態の採用が制度的に可能になります。
国会審議では、全デジタル形式の教科書の適用範囲が大きな争点となりました。文部科学大臣は、発達段階と教科特性を踏まえながら、小学校4年生以下では全デジタル教科書の採用は認めるべきではないこと、また国語・社会・道徳などの教科では慎重に考えるべきとの見解を示しました。一方、同学年・教科であっても紙とデジタルを組み合わせた「ハイブリッド形態」については十分に考えられると述べられました。
## 紙とデジタルの役割分担
重要な論点として、制度改正によって紙の教科書が廃止されるのではないかという懸念が提示されました。これに対して、政府答弁では紙にも「一覧性の高さ」や「長文読解に適した形式」といった利点があり、デジタルの「動画・音声による説明」と組み合わせることで学習の充実につながると説明しました。紙の教科書を一律廃止する考えはないことが明確にされました。
## 障害のある児童生徒への対応
学年一律の制限による課題として、紙教科書での学習が困難な障害を持つ児童生徒への対応が議論されました。政府は教科書バリアフリー法に基づき、検定教科書をフルデジタル化し、アクセシビリティ機能を付加した「教科用特定図書」を位置づけることで対応する方針を示しました。国が標準規格を策定し、発行を促進する予定です。
## 手書き学習と健康への配慮
手書きによる学習が減少するのではないかという懸念に対して、大臣は「デジタルで学んだ内容を紙のノートにまとめるといった手を動かす活動は今後とも重要」と述べました。大臣指針には、書く活動を学習の中で確保する重要性を明記する予定です。
健康面については、現在も「30センチ以上の画面距離」「30分ごとの休憩」「就寝1時間前の使用禁止」などのガイドラインが周知されており、制度改正後も医学的知見に基づいた健康上の留意点を大臣指針に明記することが確認されました。
## 諸外国の動向と教科書の定価
スウェーデンについては、近年印刷教科書の購入補助を導入したものの、デジタル化から全面的に回帰したわけではなく、年齢に応じたバランスを追求している状況が説明されました。フィンランドでは、デジタルと紙の両者の長所を生かす方針が確認されています。
出版社の経営基盤への配慮として、同一内容を3つの形態(紙・デジタル・ハイブリッド)すべてで作成することは求めない、教科書定価については適切な価格設定を検討する、デジタルコンテンツの無制限拡大を抑制することなどが国会で答弁されました。
## 今後の制度整備スケジュール
検討会議は、以下の並行した整備作業を進めます:
– **政省令・告示の策定**:年度内に完了予定
– **検定基準の検討**:検定審議会で秋頃までに取りまとめ
– **標準仕様の策定**:デジタル部分のアクセシビリティ機能などを年度内に策定
– **実証研究の推進**:2030年度の小学校導入に向けた継続的研究
– **教科用特定図書のための標準規格**:バリアフリー対応の仕様を策定
衆議院では11項目、参議院では16項目の附帯決議が採択され、紙・デジタル・体験活動のベストミックス実現、自治体の通信環境整備、採択権者の負担軽減、児童生徒の健康管理などが強調されました。
検討会議は次回7月16日に開催予定で、紙・デジタル各々が効果的な学習場面や健康面への影響について、委員からの意見発表を予定しています。秋までの指針取りまとめを目標として、複数の会議体と連携しながら検討が進められます。
出典:文部科学省ウェブサイト https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/206/gijiroku/mext_02382.html
