文部科学省は令和8年6月1日、全国的な学力調査に関する専門家会議(第1回)とCBT化検討ワーキンググループ(第1回)の合同会議を、Web形式で開催しました。
会議では、令和8年度全国学力・学習状況調査の実施、令和7年度の学力調査を活用した課題分析研究の最終報告、今後のCBT化の進め方、調査結果の利活用などについて審議されました。
■CBT化と測定方法の課題
CBT化に関連して、複数の委員から教育現場での実装上の課題が指摘されました。特に、iPad での手書き入力、ノートパソコンでのタイピングなど、端末やOSによって異なる入力方式が、紙ベースのテスト(PBT)との測定条件の差異をもたらす可能性が懸念されました。英語の記述問題で、タイピング時には文字の自動修正機能が容易に使える点なども指摘され、事務局は今後、PBTとCBTの差が生じないよう工夫することとしました。
■IRT導入に伴う研修と支援体制の充実
最大の課題として浮上したのが、IRT(項目反応理論)の導入に伴う教育現場での理解と活用です。複数の委員から、IRTのスコアやバンドの意味が複雑で、教員や保護者に対する説明が難しいという指摘がありました。昨年度の理科でIRT結果を返却した際、市町村教育委員会から「結果の伝え方が分かりにくく、授業改善にどうつなげるか明確でない」との声が多く寄せられたとのことです。
委員らは、全員が高度な統計知識を習得する必要はないものの、分析に関わる教育委員会職員や指導主事については、多重代入法や欠測処理を含めた高度な研修機会の提供が必須だと強調しました。事務局は、研修動画の作成や近隣大学との連携など、複層的なサポート体制の構築を検討することを表明しました。
■特別配慮が必要な児童生徒への対応
特別配慮が必要な児童生徒のためのプログラムについても、実装上の課題が報告されました。あるCBT拡大文字問題プログラムの利用状況調査で、弱視学級の生徒がブラウザ設定の制限のため十分な設定調整ができず、結局通常版での受験を余儀なくされるケースが確認されたとのことです。委員は、端末の種類、各自治体が選択するeポータル、自治体の設定制限など、複数の要因が重なると、せっかくの配慮機能が活用できない現状を強く指摘しました。事務局は、問題プログラムの内容改良と実施面での改善に取り組む意向を示しました。
■保護者調査の回収率確保
保護者向けの調査を紙からオンラインへ移行することについて、過去に中学校の回収率が30%を下回った事例を引き合いに、回収率低下への懸念が表明されました。事務局は、一定の回答率確保が調査として成り立つための前提条件であることを認め、学校と保護者への協力要請を含め、回収率を高めるための対策を講じることを約束しました。
■課題分析研究から得られた知見
福岡教育大学による課題分析研究の最終報告では、学力成績の改善が見られた学校と見られなかった学校の差について、単年度の成績変動だけでなく、学校の継続的な取り組みや生徒構成の変化などを総合的に評価すべき点が強調されました。また、女子生徒が算数好きを感じやすくなるには、実生活と結びつけた授業や生活事象との関連を図った授業が効果的である、という領域別の性別差の分析結果も報告されました。
■今後の課題
複数の委員から、IRT分析と現場の授業改善をつなぐ「翻訳者」的な人材育成の必要性が指摘されました。統計手法の理論と学校現場の実践の両方を理解できる指導主事や教育センター職員、さらには教員養成大学での人材養成が急務だとの意見が相次ぎました。また、結果返却を7月中旬から可能な限り早期化することで、学期内の授業改善につなげる工夫も求められています。小学校は令和9年度からのCBT本格実施に向けて、令和8年度秋からサンプル問題を公開し、実装上の課題を早期に吸い上げることが計画されています。
出典:文部科学省ウェブサイト https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/200/giji_list/mext_00007.html
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