文部科学省は2026年6月16日、科学技術・学術審議会情報委員会のワーキンググループ第6回会合を開催し、AI for Scienceを支える研究データ基盤の在り方について最終的な審議をまとめました。
本会合は、AI科学時代の研究環境整備に向けた重要な検討の最終段階であり、複数の分野から寄せられた先進的な取組事例や国際動向を踏まえた審議まとめ案の策定が進められました。
**分野別の課題認識**
ライフサイエンス分野では、倫理審査やデータキュレーション(品質管理)に要する人的負担が大きく、自動化の拡充が必要とされています。また分散したデータベースの後づけ統合ではなく、ナショナルセンターによる集約型インフラへの移行が検討されています。マテリアル分野では、データが存在してもAI活用に至らない現状があり、従来の検索・閲覧型から「AI学習用データセット提供」への転換が課題です。大型実験施設(SPring-8など)では、装置・施設・スパコン間に分散するデータを仮想的に一元管理できる環境整備が必要とされています。
**国際的な先進事例**
NII(国立情報学研究所)の調査によると、欧州はフェデレーション型メッシュアーキテクチャで分散データを統合利用、米国は大学スパコンと商用クラウドのハイブリッド型、韓国はメタデータ連携による軽量アーキテクチャを採用しており、各地域が異なる戦略で課題解決を進めています。
**次世代基盤の構想**
ワーキンググループが目指す方向性は、実験基盤・データ基盤・計算基盤を統合的かつ戦略的に強化し、高速・高信頼・シームレスに接続可能なシステムの構築です。研究者が個々の計算機の所在地や機種を意識することなく、必要な計算を適切に実行できる環境を実現することが目標とされています。
**共用計算資源の拡充計画**
並行してHPCI(ハイパフォーマンスコンピューティング・インフラストラクチャ)の改革も進行中です。AI for Science基本戦略方針に基づき、2030年度までに共用計算資源を10倍以上に拡充する具体目標が掲げられました。これは単なるGPU増設ではなく、①複数資源をワンストップで利用可能なアクセス性、②複数資源を統一的に利用できる共通性、③利用手続の迅速化という三点の実現が不可欠とされています。
2025年から2029年にかけて段階的に、共通バウチャー制度やリソースブローカー機能、メタスケジューラなどの実装が予定されています。従来のSSHベースのバッチ処理中心から、API利用やウェブブラウザ利用、365日24時間稼働のAIサービス提供まで、多様な利用形態への対応が求められています。
**人材育成と運用体制**
委員からの意見では、基盤づくりだけでなく人材育成・運用体制の充実が強調されました。人員減や技術者の高齢化が実運用の課題となるため、これらへの言及が必要との指摘がなされています。
**認証・セキュリティの統合**
各分野で個別開発されたツールや基盤の相互運用性向上のため、共通認証機構の整備が求められています。学認IDを起点として計算機・データ・サービスへのアクセス権が自動付与される仕組みが検討されており、これにより研究者の利便性が大幅に向上するものと期待されています。
本審議まとめは、オールジャパンでの次世代研究インフラ構築に向けた方向性を示すもので、今後の具体的な整備計画の基礎となります。
出典:文部科学省ウェブサイト「AI for Scienceを支える研究データの管理・利活用と流通の在り方ワーキンググループ(第6回)議事録」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu29/006/gijiroku/mext_00007.html
